幕末伝習隊 (小泉清澄・著/電子書籍)

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幕末伝習隊

幕末の動乱期が舞台。フランス語通訳・武者清吉郎、十五代将軍・徳川慶喜、フランス軍人・ブリュネらを中心に、敗者ながらも懸命に責任を全うしようとした幕臣たちの苦闘を描いた新歴史小説。

『幕末伝習隊』(501ページ)

幕末の動乱期を舞台に、フランス語通訳・武者清吉郎、十五代将軍・徳川慶喜、フランス軍人・ブリュネらを中心に活写することにより、敗者ながらも懸命に責任を全うしようとした幕臣たちの苦闘を描いた歴史小説。

百姓の次男坊として生まれた清吉は、旅すがら村に立ち寄った吉田松蔭とよしみを通じることによって、江戸遊学を決意。幼馴染(おさななじみ)の長蔵とともに村を発つ。道中でひろった平太も加わり、江戸での生活が始まる。桜田門外の変に遭遇するなど世情が騒然としてくるなか、三人は坂本竜馬、小栗上野介、近藤勇、相楽総三、勝海舟らと触れ合うことにより、新しい時代の息吹を身近に感じることとなる。

その頃、一橋慶喜は島津久光の推挙により、嬉しくもない将軍後見職に就任する。が、その手腕はなかなかのもの。弱体化する幕府の屋台骨を一身に背負い、薩摩ら倒幕派と熾烈(しれつ)な政治戦を繰り広げる。その姿はまさに孤軍奮闘。しかしながら、久光をはじめとする賢侯たちとの攻防は私闘ともいうべきものであり、政局をいよいよ混迷させる原因となる。

幕臣きっての財務官僚・小栗上野介は弱体化する幕府を憂い、また、これからの日本の在り様を模索していた。そして進めたのが横須賀製鉄所設立、ならびに幕府の軍制改革である。これを後押ししたのはフランス公使ロッシュ。だが、幕仏協調路線の推進は、倒幕を画策する薩摩藩の警戒を招き、勢い、倒幕派を支持するイギリス公使パークスとロッシュとの間は誹謗(ひぼう)あり、中傷ありの外交戦争にまで発展する。

フランスの幕府支援策の一環として、フランス軍より選りすぐりの軍事顧問団が派遣され、横浜の大田村伝習所において洋式演習が行われることとなる。フランス軍事顧問団と日本の伝習隊たちは、互いに試行錯誤しながらも調練にはげみ、幕府精強部隊として仕上がってゆく。そこには人種や階級を超えた友情が芽生えるのだった。武者清吉郎はフランス語通訳として活躍。一方、若きフランス軍大尉ブリュネは、シャノワンヌ団長との会話において、『一己の武人』としての誇り高き心底を明らかにする。

同じ頃、将軍・家茂の急死により将軍職を継承した慶喜。『家康の再来』とまで言われた彼は、倒幕派への巻き返しの秘策として大政奉還を実行する。目指すは幕府から脱却した慶喜公国の実現である。しかし、王政復古の大号令、鳥羽・伏見の戦い、帝の外国公使謁見を経て、その夢はもろくも潰(つい)えてゆく。……

度重なる戦いで、尊い命を落としてゆく幕府伝習隊の兵士たち。彼らを目の前にしながら、内政不干渉という外交上の理由から何もできないでいるブリュネたち、フランス軍事顧問団。そんなある日、イタリア公使館で仮装パーティーが開かれた。サムライを模して踊るブリュネと同士カスヌーブ。それは新フランス公使ウトレー、友人であるイギリス人通訳アーネスト・サトウ、そして親愛なるシャノワンヌ団長への告別であった。

武者清吉郎、ブリュネたちのその後。そして、新政府軍の将校に発せられたフランス人将校ブスケーの言葉。「兵士を育てるということは、これ、すなわち、兵士に自信を持たせるということ。果たして、君たちにこれがなし得るのか」……

小泉文学の奏でる一大叙事詩、ここに完結。

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