経済・金融のクロスボーダー化、グローバル化に伴い、通貨統合の議論は中長期的に強まる傾向にある。本論は、湾岸協力会議(GCC)における通貨統合が国際金融における最適通貨圏の理論及び政治経済学的な観点から支持されているにも拘らず、その実現がなぜ阻害されているかを論じるものである。その分析においては、その主要な要因が経済・金融のいわばインフラ的な制度面にあるのではないかという仮説の下に、EUのユーロとの比較を通じて要因の検証を行い、そこから得られるインプリケーションを考察している。
【目次】はじめに序論1.背景および問題設定2.本書の目的および仮説3.構成および分析の前提Ⅰ.GCCの概要1.GCCの発足とガバナンス構造2.地域の政治・経済構造3.GCCにおける通貨統合計画の沿革Ⅱ.通貨統合等における先行研究およびEUとの比較1.通貨統合の理論的側面とGCCへの適用2.世界の通貨同盟と地域共同体・地域機構3.GCC通貨統合の制度的側面に関する先行研究4.EUにおける通貨統合の経緯5.GCCとEUの間の協力関係6.GCCにおける収斂基準とその達成状況7.本書の分析の対象および手法(EUとの比較)Ⅲ.GCCの金融経済に関する情報収集・公表の枠組1.GCCにおける統計制度の実態の検証2.EUとの比較分析3.比較分析に基づくインプリケーションの考察4.小括Ⅳ.共通通貨の為替相場制度1.GCCにおける為替相場制度の実態の検証2.EUとの比較分析3.比較分析に基づくインプリケーションの考察4.小括Ⅴ.GCC中銀の枠組み1.GCCにおける中央銀行制度の実態の検証2.EUとの比較分析3.比較分析に基づくインプリケーションの考察4.小括Ⅵ.GCCの決済制度1.GCCにおける大口資金決済制度の実態の検証2.EUとの比較分析3.比較分析に基づくインプリケーションの考察4.小括Ⅶ.GCCの銀行監督1.GCCにおける銀行監督の実態の検証2.EUとの比較分析3.比較分析に基づくインプリケーションの考察4.小括結論参考図表引用・参考文献